フレックスフェイス膜を展張する載荷試験台は膜の展張力にたえられるよう、H-200鋼により組み立てられました。展張膜は1:1・1:2・1:3の3タイプが供されました。フレックスフェイス膜は載荷試験台にフックボルトにより展張されました。載荷試験台は制作時にできる限り注意したものの、十分な精度は出せません。そこでフレックスフェイス膜の水平度は水準器により測位後、補正をしました。フレックスフェイス膜の供試体の外周には6063S-T5のアルミニウム押出材を採用、またフックボルトの間隔は約425mmとするなど十分耐えられるように配慮をしました。
大型道路標識に使われる、半透明のフレックスフェイスシートの膜は非線形材料であるので、解析に用いるヤング係数値の選定は困難です。この値次第で解析値をいくらでも実験値にあわせることができてしまいます。ここでは、島津オートグラフ(左写真)を用いて、フレックスフェイスシート膜の応力-歪み特性曲線を決定し、この結果を踏まえて
Et=1.9x104kg/m2としました。
日本道路公団研究所の徳増氏からゼネラル物産(株)に依頼された膜の実験は以下のように考えます。すなわち、現況の大型道路標識を膜で設計する場合、誰にでもできるよう簡単な式で行え、その際、標識形状の縦横化により誤差を伴うので、その値を縦横比により簡単な重み値で補正できないかという提案です。実験を踏まえて、理論的に計算された値との整合性を観ながらその重み値を決めることがこの報告書の主題であります。
膜の張力および変形を解析的に求める場合、一方向膜理論に基づく略算的な解法があります。これは吊り橋などに用いられるパラボラ近似かまたはカテナリー近似で、特に日本膜構造学会編の膜構造建築物の公式は前者の方となっています。一方、二方向膜理論は重みつき残差法のうちGalerkin法に基づく厳密的な解法で、ここでは参考文献に記した1972年の"Deformations
and stresses of orthotropic rectangular membrane under uniform lateral
pressure"に基づいて誘導されました。前者の欠点としては、解の上界を与え安全ではありますが実験に基づく真の解とは大きな誤差を伴うことがあげられます。いっぽう後者は標識の形状、材料特性を問わず、あらゆる場合に適用できますが、設計に用いるには少し簡略化する必要があります。しかし、標識の形状と用いる膜の材種を限れば、一方向膜理論に基づく略算的な解法と同じ形の式に近似化することができます。
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