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レオナルド・フィボナッチ ( Leonardo Fibonacci 1170 – 1250? イタリア )

フィボナッチの生地はイタリアのピサ( pisa )、生没年は定かではない。 フィボナッチが生まれ、育まれた12、13世紀のヨーロッパは、暗黒の中世と言われた蛮族からの襲来また国内の分裂から解き放たれ、社会的にも、政治的にも、文化的のも幾分の明るい兆しが見られ、農産物の増産、人口の増加、商業活動の活性化が進み、まもなく訪れる技術的、工業的、化学的な発展の足音が聞こえてきそうな気配の時代であった。 また、十字軍( Crusaders 1096 – 1290 )、好奇心に溢れ、外の世界に憧れる商業を営む人達による東方世界文明への接触が試された時代でもあった。 

フレデリック2世( 1194 – 1250 )は僅か2歳にして、1196年には、フランクフルト( Frankfurt am Main )でドイツの王位( King of the German )に就き、1212年にローマの王位( King of the Romans )、1220年から1250年まで神聖ローマ帝国の皇帝( Holly Roman Emperor在位:1220 – 1250 )、1198年から1250年までシシリーの王位( King of the Romans )に就く。 フレデリック2世はあらゆる分野の学問を奨励し、特に数学と科学には興味を示していた。 当然、フィボナッチの卓越した数学に興味を抱き、フィボナッチはフレデリック2世にピサで謁見している。

こうした状況の中、12世紀末までには、教皇と神聖ローマ法王とのいざこざも無くなり、多くの独立共和国が成立した。 中でも、ピサ共和国は小国ではあったが、海洋に漕ぎ出し商業国家としてまたキリスト教文化とイスラム文化の交流の上で重要な役割を演じる。 

フィボナッチの父親はピサで皮革の商いをし、またアルジェリア( Argeria )のブギア( Bugia )で税関使をしていた。 フィボナッチは父に随いて、幼い時から北アフリカのイスラム世界を旅をしていた。 父からは商売の仕方、計算の仕方を教わっていたが、フィボナッチ自身は、仕事の合間をぬってアラビア世界の代数学を独習していた。 

アルジェリアは北アフリカの( マグレブ Maghreb: 日の沈む、西方の)諸国 の一国で、現在でもバッグ、本の装丁に使われる原材料のなめし皮を加工し輸出している。 ピサ、フィレンツエ、アスコリ( Ascoli )にはバッグ、靴などの高級商品のメーカーがあり、イタリア中部の町、アスコリにはTom Tomの商品名で知られるバッグ・メーカーがあり、またアスコリと言えば、若い人にはサッカーの名門、1898年に創立されたアスコリ・カルチョ( Ascoli Calcio )、セリエBが活躍している事で知られている。

フィボナッチは30歳、1200年の頃、旅に終わりを告げ、今まで身に着けてきた代数学の著作を心掛けるようになる。 以下の著書を記述しています。
Liber Abbaci ( The Book of Calculation ) 1202 年
Practica Geometriae ( The Practice of Geometry ) 1220 年
Liber Quadratorum ( The book of Square Numbers ) 1225年
Flos ( The Flower ) 1225 年

私達の日常の生活に係わりのある書として、特にLiber Abbaci「そろばん(算盤)の書」が知られています。 15節の「整数の加法」に出てくる「うさぎの出生率」を話題として書かれている奇妙な数列(下記)は、その神秘性と広範な応用性から、後の世の17世紀のフランスの大数学者フェルマー( Pierre de Fermat )は整数論( number theory )として継承発展されていく事になる。
     1 1 2 3 5 8 13 21 34 55 89 144
何の代わり映もしない、この数列は「フィボナッチ数列」として知られている。 この数列の規則性は3項以降は、前の2つの項を加算した値となっている。 例えば、8は3と5を加算した値、89は34と55を加算した値となっている。 このように作られている数列の各項の並びは、いま一つの項、例えば、55を34で割ると、55/34 = 1.6176、また144を89で割ると、144/89= 1.6179、、、、、で限り無く( 1 + √5 )/2 = 1.618033989に近づいて行く( 収束 )。 この値の比率1 : 1.618033989は、名刺、ハガキ、コピー紙等の横と縦の比率で、ギリシャの時代から、美しい比率とされ、一般に黄金分割比として知られている。 ギリシャのパルテノンの神殿、楽器バイオリンの形状比なども例に漏れない。
 
この「フィボナッチ数列」1 1 2 3 5 8 13 21 34 55 89 144 の内2 3 5 8 13 は音楽の美しさの秘密とされ、ピアノのオクターブ( octave )は13音( notes )で構成され、また白鍵8音階( scales )と黒鍵5音階で構成され、特に黒鍵は2音と3音で構成されている。 それゆえ、ベートーベン、モーツアルト、ドッビシーの音楽に限らず、どの楽章の組み立てを分析してみても、全曲を通して、この「フィボナッチ数列」に基づく和音( chords )で構成されていると言います。

また、この「フィボナッチ数列」1 1 2 3 5 8 13 21 34 55 89 144は動植物の生体の成長にも当てはまり、ここで樹木の下から上へと伸びる状態を絵に描いて見て下さい。 地上からまず生えた木が最初2つに分かれたとします。 Yの字型になります。 木は土中から栄養と水を吸い上げて育ちますが、分かれた枝の両方に均等に分配する事はなく、左右どちらかに多く分配します。 仮に右の枝に多く分配をすると右側がYの字型に2本になり都合3本になります。 また暫く成長すると、左側がYの字型に2本になり、右側の2本の内どちらかが2本に枝分かれしますので、この段階で都合5本になります。 引き続き同じように枝分かれを続けると、8本になり、次の段階では13本になります。 この枝分かれの状態2 3 5 8 13 は紛れも無く「フィボナッチ数列」になっています。  植物の木ばかりでなく「松ぼっくり」の種子も「ひまわり」の花弁も、よく観察すると「フィボナッチ数列」になっているようです。 またフィリッピン海溝の深い所で生息する「オウム貝」も死んで、黒潮に乗り、鹿児島、宮崎辺りの海岸に流れ着きますが、この貝の成長も貝殻の大きくなる様子は、2 3 5 8 13 と「フィボナッチ数列」的に成長します。 同じような太さで成長はしないのです。

さらに、Liber Abbaci「そろばん(算盤)の書」の8節の「商品の相場」に出てくる理論も金融の相場では、「フィボナッチ数列」と「エリオット波動理論」の組み合わせは欠かせないものです。 相場の乱高下する場合、どこで押すか引くかする場合の判断に困った時には、前述の1.618から1.0を引いた0.618と1.0から0.618を引いた0.382の値が判断基準として用いられる。 相場の変動は「エリオット波動理論」によると「55日移動平均線」上を動き、相場の変動周期は55日の周期で変動するらしく、「売りは61.8%上昇した時に売り」それ以上、上がるとは考えずに見切りをつけ、「買いは38.2%下がった時に買い」それ以上、下がるとは考えずに見切りをつけるらしいです。 相場に係わるトレイダーは一つの目安にしているようです。 

「エリオット波動理論( the Elliott Wave Principle )」は米国のラルフ・ネルソン・エリオット( Ralph Nelson Elliott 1871 – 1948 )が1938年に発表した学説で、5波で上昇、3波で下落という8波が相場の周期という「フィボナッチ数列」に従うものです。

天文学者のコペルニクスが地動説を唱えた時に、プトレマイオスが持ち込んだ転周円を組み込んだ天動説をおかしいと直感で思った事は、神がそれほどまでに複雑な運動を創造するとは考えられないと。 「フィボナッチ数列」に従う、自然界もやはり見事と言う他に無い神の創りたもうたものと思われます。 

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