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ギルバート ( William Gilbert 1540 – 1603 イギリス )

ギルバートはColchester、Essex、Englandに生まれた。 1588年にSt.John’s College、Cambridgeで学び、1570年代にLondonで医学の修業を積み、医学の面で中世西欧の医学の第一人者であった。 1600年にRoyal College of Physiciansの学長となり、Queen Elizabeth 1世が1603年に亡くなるまでの従医を勤め、後もKing James Iに仕えたが、同年、ギルバートは疫病のペスト により、他界することになる。 

ギルバート が生前に残し研究資料、器具類他は母校のRoyal College of Physiciansに移管されたが、残念なことに1666年に起きたLondonの大火で消失することになる。 医者としての多忙の中、余暇( his spare time )に「電磁気学」の基礎を築いた偉人であった。

ギルバートが不思議に思い、思索した事は、琥珀が物を引き付ける力(静電荷)と磁石が物を引き付ける力(磁力)の違いは何かということです。 古代哲学者ターレスも琥珀電気( amber electricity )の事は知見しておりました。 琥珀の( amber )は俗名で、学名は ( succinite )です。 琥珀は、古代ギリシャ人(紀元前600年頃)が装飾品として用いており、着けている内に汚れてきて、拭けば拭くほど汚れがひどくなります。 この汚れ(埃)を引き付ける力、琥珀効果( amber effects )の事を不思議に思っていました。 

この現象が静電荷によるものと理解されるようになったのは16世紀になってからです。 一方、静電荷に対して磁石( agencia の石 )の磁力についての知識はさらに古代の紀元前3000年の頃から多くの人々の間にあったようです。
 
また磁石を現在のようにmagnetics と呼ぶようになったことについては、伝承として二つの説があり、一つは小アジアの羊飼いの少年の名前マグメシアとする説と、一つは磁石の産地ギリシャ北方のマケドニアのマグネシア地方で算出した事による説の由来があります。 

ギルバートはいずれの力も物を引きつけるという、現在では静電荷と磁力と呼ばれているこの二つの力の違いを明らかにするために、磁鉄鉱(lodestone、magnetic iron ore)の特性について、17年間で知り得た知識はDe Magnete ( theMagnet ) として1600年に著作されました。 この著書は当時の天文学者、Johannes Kepler、Galileo等に大いに興味をもたれ、かつ西欧中に磁気と電気の現象を解明する科学者の成書として大きく貢献しました。 

ギルバートはその著書「De Magnete」の中で琥珀を毛皮で摩擦すると静電気が起こることは、かなり古くからわかっていましたが、ギルバートは摩擦による帯電(電荷)現象は琥珀に限らないこと、また琥珀以外にも帯電(電荷)する物のあることを発見しました。 また磁石には極性があり磁石の極性が地球の極性と深いつながりがあるとの仮説を立て、実際の地球に見立てた小さな地球を実験室に作り、実際の地球と同じ磁界が存在していること、地球は24時間で一周するが、それに伴い、地球を覆う磁界も一周すること、また熱を加えていくと磁性現象が消えることを発見しました。 

これらの現象を現在の自然科学探求のための実験と同じ手法で実証づけた最初の科学者でした。 なんと云ってもギルバートの最大の功績はDe Magnete ( theMagnet )に書かれているように磁気と静電気「琥珀の物を引きつける現象(amber effect)」を明確に区別しており、完全な磁気現象学を発展させ確固なものとして基礎を築き上げた点かと思われます。 琥珀はギリシャ語でelectronと呼ばれ、電気をelectronと命名したのはギルバートです。 

ギルバートが生きた時代は後期ルネッサンス期で、コロンブス、ヴァスコ・ダ・ガマ、マゼランにより、大航海時代が終わり、コペルニクスの「天球の回転」の著作が出版され、天文学者、Johannes Kepler、Galileoが現れた同時代の科学者で、地球、自然が科学的に明らかになり、そして世界は大航海時代に入っており、航海の安全を非常な正確さで約束する磁石「羅針盤(compass)の磁針として」は航海装置の数少ない道具としての役目を果たした事は大変大きな成果と云わざるをえません。 

余談になりますが、琥珀は日本では岩手県の久慈鉱山で採掘される琥珀が有名ですが、鉱物ではなく樹枝液が長い年下(中生代白亜紀約9000万年前)を掛けてノジュール(団塊)状堆積岩となったものです。 さらなる余談になりますが、日本の国歌「君が代」は10世紀初頭に編纂された勅撰和歌集「古今和歌集」の詠み人知らずの雅歌で、さざれ石の巌をとなりてのくだりも、人によっては岐阜県に多く産するさざれ石という人もいますが、「さざれ石のみが巌をとなるのでなく」、私は石がさざれて(風化)いき長い年月をかけて巌をとなると解しています。 今では子供たちも知っている水成岩、深成岩の成り立ちかとも思います。 またある某紙に岐阜県に行けば「さざれ石」を見られるような記事が掲載されておりましたが、なにも岐阜県まで行かなくとも文部省の中庭に置かれており誰でも見学できます。

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